「界隈消費」から読み解くZ世代と令和の消費構造vol.2│「感情」が動くマーケティング

更新日:2025年12月01日(月)

モノが売れる理由”は、価格や機能だけじゃない。心が動く瞬間にこそ、消費の本質があります。
この連載では、日常の中のちょっと気になるトレンドをテーマに、マーケターの視点からその背景やヒントを紐解いていきます。

今回は 「界隈消費」 

今話題の界隈消費について、全3回にわたって考察していきます。

前回の記事はこちら

「界隈消費」から読み解くZ世代の気持ちの動き方
~Vol2.SNSが繋ぐ界隈と社会 拡散する小さな熱狂~
 

消費も動かすZ世代の熱はいったいどこまで広がるのか

界隈の熱はどこへ向かうのか?

前回の「界隈消費は若者文化を越えた。Z世代が動かす共感経済」では、Z世代の“好き”や“共感”が可視化され、世代を越えて経済を動かす構造を見てきました。界隈消費は、単なる若者の流行ではなく、共感を軸に広がる社会の新しいかたちでした。

では、その共感はどのように広がり、社会を巻き込んでいくのでしょうか。

誰か一人の「好き」や「こだわり」が、どうやってトレンドへと変わるのか。そして、なぜZ世代の界隈発信が、世代を超えて購買を動かすまでに成長するのか。

その鍵を握っているのが、SNSという共感のハブ です。界隈で生まれた“小さな熱狂”が、SNSを通じて拡散し、社会に波紋を広げていきます。

第2回では、SNSがどのように界隈と社会をつなぎ、共感を増幅させているのかを整理します。

SNSが界隈消費を加速させる仕組み

SNSでは、毎日のように新しい「○○界隈」が生まれ、一部の熱狂が突然“トレンド”へと変わります。Z世代はモノを“見せびらかす”のではなく、それと過ごす時間や空気感を共有する傾向があります。 
例えばコスメひとつにとっても、その商品そのものがその日の自分のテンションを上げるアイテム。最近では韓国コスメメーカーをはじめ、パッケージのデザインに徹底的にこだわる企業が増えています。所有することで複数のメリットを感じることができる、そんなアイテムが界隈消費を加速させるのではないでしょうか。

つまり消費は「所有」することだけにとどまらず、“どんな時間やどんな気持ちをもたらしてくれるのかというQOLの表現になっているのかもしれません。
これがまさに今まで唱えられていて捉えることができなかった、モノ消費ではなく、トキ・コト消費を可視化した現象だと言えそうです。

さらにSNSのアルゴリズムが、「好きな人が好きなもの」を可視化し、同じ熱量を持つ人同士をつなぐことで共感の連鎖を加速させます。

モノを買うことは、そのコトやトキを満たすかどうかも大事な時代

拡散する“小さな熱狂”の事例

いくつかの代表的な界隈発トレンドは以下の通りです。

・Y2Kファッション:Z世代の再解釈がInstagramで拡散。“新しいレトロ”として古着市場も活発に。

・平成リバイバル :TikTokの楽曲・アニメから火がつき、グッズやアパレルへ派生。懐かしさ×新しさのリミックス。

・健康キャンセル界隈メシ(#トゥーンバ #どん兵衛油そばアレンジ):たまには欲望のまま食べたいものを食べる、チートデイが若者のライフスタイルに馴染みつつある。

「界隈」から「社会」へ広がるプロセス

Z世代から生まれた界隈消費が社会的ブームになることも多々ある

無数に生まれては消えていく界隈。
そのすべてがブームになるわけではありません。
界隈消費が社会に定着し、「スタンダード」と呼ばれるまでには、いくつもの段階を経て“残っていくもの”と“消えていくもの”が分かれていきます。

 1.個人の“好き”が発信される  

 2.共感した人が“仲間”として再発信   

  3.他界隈・大人世代が“面白い”と感じる  

  4.企業・メディアが注目し、商業化  

  5.“界隈発”が“社会発”へ進化  

界隈がブームへと成長するかどうかの分かれ目は、
「(2) 共感した人が仲間として再発信」から「(3) 他界隈・大人世代が面白いと感じる」へ行けるかどうか。
この“越境”が生まれることで、初めて界隈の熱は社会へと波及します。

企業が理解すべき「SNS時代の界隈消費」

マーケットが何を望んでいるかの見極めが必要になる

SNSの世界では、“自社ターゲット”を捕まえようとするのは少しナンセンスかもしれません。言い古された言葉ですが、年齢・性別・属性だけでは人の価値観を捉えられません。
企業が把握すべきは、「自社ブランドがどんな共感の文脈で語られているか」という点です。

そして今、企業は問われています。

「マーケットといかに会話ができているか」

“何を作るか”より“どんな共感を生むか”がマーケティングの出発点です。界隈消費はそのマーケットイン思想を体現する現象。
Z世代の感性には、企業が学ぶべき“市場との対話のヒント”が眠っています。

 

マーケットインが意味する“市場”の正体

マーケットインという言葉はよく語られますが、その“マーケット”の中身は、かつてよりもずっと複雑になっています。
共感や空気、感情の揺れ、世界観の違い……。
数字では切り取れない要素が、今の市場には確かに存在しています。

そしていま、マーケットを理解するうえで欠かせないのが、「会話する姿勢」です。
マーケットとは一方的に分析する対象ではなく、会話が成立する相手になっています。
企業が声を届け、生活者がリアクションを返す。
その反応に再び企業が応答する――。
この往復によって、初めて“関係”が育まれ、優良なUGC(ユーザー生成コンテンツ)が生まれていきます。

つまり、マーケットインとは「生活者の声を聴く」ことに留まらず、生活者と会話を続けることそのものに意味があるのだと思います。
この対話の積み重ねこそが、複雑化する市場を理解するうえでの唯一の道であり、“共感”という目に見えない価値を共有する唯一の方法なのかもしれません。

そう考えると、界隈消費は単なるトレンドではなく、私たちマーケターに与えられた“新しい宿題”のようなものなのかもしれません。
生活者が大切にしている温度や空気を、これからもできるだけ丁寧に見ていきたい。
その積み重ねこそが、結果として“いまの時代にフィットしたマーケットイン”につながっていくのではないでしょうか。

マイナビとして、揺れる市場と向き合い続けるということ

そしてもうひとつ、大切なこと。

それは、この複雑な“揺れる市場”には、明確な正解がないということです。

共感は移ろい、界隈は立ち上がっては消えていく。

昨日の「好き」が、今日も同じ熱量で語られるとは限りません。マーケターとして、これほど捉えにくい市場はないのかもしれません。

けれど、だからこそマイナビがZ世代と真摯に向き合い続ける意義があると感じています。彼らの“好き”の変化や、日々の温度の揺れを丁寧に見つめること。答えが出ないからこそ、短期的な結論を求めず、対話を続けること。その積み重ねが、これからの市場を読み解くための唯一の道になるはずです。

界隈消費は、単なる若者文化の観察ではなく、「生活者とともに歩むマーケティングとは何か」を問い直すきっかけだと思っています。その問いに、私たちマイナビ自身がこれからも向き合い続けていきたい。そんな気持ちを込めて、このテーマに取り組んでいます。

SNSが社会の感情を可視化する時代へ

SNSは、ただの情報発信ツールから、  人々の感情と価値観を可視化するシステムへと進化しました。

Z世代の界隈消費は、データで動く社会から感情で動く社会への象徴的なシフトなのです。

【次回予告】

界隈発トレンドが市場をどう広げ、大人世代へどう波及するのか。 

推し活・キャラクター消費・キダルト市場を事例に、

Z世代が火をつけ、大人世代が育てる「共感の経済圏」を解き明かします。

【マイナビ】マーケティング・広報ラボ 桑野好絵
マイナビベアの写真
【マイナビ】マーケティング・広報ラボ
2007年マイナビ入社。 女性向けメディアや若年層トレンド領域に従事し、現在は『マイナビニュース』『マイナビウーマン』などの広告企画を担当。 Z世代に特化した調査チーム「マイナビティーンズラボ」のプランニングやデータ解説、企業向けの講演も行う。 高校1年生の息子を育てる母として、「調査データ」と「リアルな声」の両面から若者インサイトを掘り下げている。

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