玩具市場を牽引する「キダルト」とは? 注目される理由や特徴を解説

更新日:2025年03月05日(水)

玩具市場が年々右肩上がりに成長していることを知っていますか?  市場の成長に関与していると考えられているのが「キダルト」と呼ばれている人々です。今回は「キダルト」について、注目されている背景から彼らの特徴、ヒット商品やトレンド傾向まで詳しく解説していきます。

キダルトとは

キダルトとは

まずは、キダルトの概要について解説します。

 

キダルトの定義

キダルトとは、「子ども(kid)+大人(adult)」の造語で、子どもの頃に楽しんでいた遊びや玩具に再び興味を持ち、自由に楽しむ大人たちのことを指します。30代~40代の年齢層がメインで、子どもの遊び心を持っていると考えられており、玩具やプラモデル、ゲーム、人形、フィギュアなど、趣味として好きなものに没頭するのが特徴です。

また経済力があることから“大人買い”をする傾向もあり、SNSやオンラインコミュニティなどの場で、積極的に情報共有や交流を行っています。

合わせてチェック!

キダルトの年齢層は、ミレニアル世代にも該当します。彼らがどのような社会的影響を受けてきたのか、価値観も合わせてチェックしましょう! Z世代やα世代など、各世代との比較もまとめて紹介しています。

参考記事:【各世代の特徴一覧】価値観の違いや効果的なマーケティング方法を比較

     

    キダルトが注目されている背景

    キダルトが注目されている背景には、玩具市場の拡大があります。

    出典:一般社団法人日本玩具協会「2023年国内玩具市場規模調査結果データ」

    出典:一般社団法人日本玩具協会「2023年国内玩具市場規模調査結果データ」

    日本は少子高齢化が加速しており、15歳未満の子供の数は1982年から減少し続け、2023年には1417万3千人と過去最少になりました(2023年10月1日時点)。

    一方で、日本玩具協会の発表によると、2023年度には国内の玩具市場規模が初めて1兆円を超えました。玩具の売り上げは少子化が進む中でも2019年度以来、4年連続で伸びており、2023年度の日本国内の玩具市場規模は、前年度比107.1%と大きく伸び、1兆193億円を記録。売上のうち、カードゲームやトレーディングカードが3割を占めています。(参考文献:一般社団法人日本玩具協会「2023年国内玩具市場規模調査結果データ」)

     

    玩具市場で拡大している商品ジャンル・ターゲット層

    さらに、2023年度の玩具市場において、拡大している商品ジャンルの伸び率をまとめました。

    2023年度、玩具市場の売上げ伸び率

    1位:ハイテク系トレンドトイ(121.5%)
    2位:ぬいぐるみ(120.7%)
    3位:カードゲーム、トレーディングカード(118.1%)
    4位:のりもの玩具(108.9%)
    5位:ホビー(104.7%)
    出典:一般社団法人日本玩具協会「2023年国内玩具市場規模調査結果データ」

    2023年度に伸びが顕著だったのは、いずれもキダルト層までをターゲットにした商品分野、あるいはインバウンド層にも人気の商品分野であることがわかりました。キダルト層とインバウンド層は、少子化の中でも玩具が成長産業になっている大きな要因でしょう。このような背景もあり、玩具製造・メーカー各社がキダルト向けのおもちゃ開発に注力し始めています。(参考文献:一般社団法人日本玩具協会「2023年国内玩具市場規模データ」)

    10代女子のトレンドは?

    玩具市場で、ハイテク系トレンドトイに続き2位の伸び率を記録している「ぬいぐるみ」。10代女子のキャラクター人気も、市場の伸びを後押ししているでしょう。10代女子の人気キャラクターランキングを公開しています。

    参考記事:【2025年版】10代女子が選ぶ!人気キャラクターランキング グッズの購入きっかけや購入したいコラボ商品など消費行動も調査

     

    他業界のキダルト向け商品

    少子化の影響もあり、他業界でも、キダルトをターゲットにした商品が発売されています。例えばお菓子では、「大人のねるねるねるね」や「大人のきのこの山・大人のたけのこの里(※現在は販売終了)」など、幼少期に食べていたお菓子が大人向けになって登場しました。

    また飲料業界では、レトロなパッケージを踏襲し、復刻発売されることが多い傾向。「三ツ矢サイダー」や「HI-C アップル」、「はちみつレモン」、「チェリオ」、「ファンタシトラス&メローイエロー」などが期間限定発売され、SNSでは“懐かしい”と話題を集めました。

     

    キダルトの3つの特徴

    キダルトには、主に3つの特徴があると考えられています。

    キダルトの3つの特徴

    強い購買意欲

    キダルトはコレクター志向があり、趣味や好きなものに対して積極的に投資する傾向があります。例えば、カードゲームやトレーディングカードは全種類コンプリートできるまで購入したり、人形用の着せ替えドレスや小物類、インテリアなどをこまめに収集している人もいます。彼らは好きなものをそろえていく過程を楽しんでおり、達成感満足感を得ているようです。

    また、限定品コラボ商品プレミアム商品などにも関心が高い傾向。細部にまでこだわった精巧デザインや、限定生産の商品には特別感があり、所有して優越感を得ようとすることも。キダルトは自分の好きなものを購入して、自己表現している一面もあります。

     

    趣味の多様化

    キダルトは、自分の好きなものを探求する傾向があります。SNSの普及により、共通の興味・関心を持っている人や、同じ趣味を共有するコミュニティが簡単に見つけられるようになり、自分と似た仲間たちとつながることができるようになりました。そのため趣味が多様化しており、さまざまなことに興味を持ち、複数の趣味を楽しむ人も増えています。

    幼少期に玩具で遊んだ思い出を再び体験し、“ノスタルジックな楽しさ”を感じることがストレス解消にもなり、リフレッシュしているのかもしれません。仲間内で最新情報をリアルタイムで共有し、趣味の輪を広げているようです。

     

    SNSの発信力

    キダルトは好きなものを魅力的に伝えることに長けており、SNSで積極的に発信もしています。SNSで情報発信することで、共通の趣味を持つ仲間とつながり、一緒に盛り上がったり、共感を得たいと望んでいるからです。例えば、コレクションアイテムを並べて、こだわった撮影をしたり、自作のアイテムを公開したりして、オリジナリティを出します。

    キダルトの投稿は、驚きや共感などポジティブな反応を喚起し、多くの人に影響を与えることも。これまでにない新しい発見や価値が見出され、次々と派生コミュニティも作られていきます。

    主要SNSのメインユーザー層は?

    主要SNSは、それぞれユーザー層の違いがあり、知っておきたい特性もあります。SNSの年齢層や利用率について詳しく記事で紹介しています。

    参考記事:【2024年版】主要SNSの年齢層を比較! 利用率や特徴、最新の傾向は?

     

    キダルトをターゲットにした事例5つ

    ここでは、実際にキダルト向け商品のヒット事例を紹介します。今回は5つの事例から、トレンド傾向を分析します。

     

    1.「フォトジェニックリカ」:コミュニティ

    フォトジェニックリカ/出典:タカラトミー公式サイト

    出典:タカラトミー公式サイト

    リカちゃんは1967年に誕生し、「ごっこ遊び」や「おしゃれ遊び」が楽しめる、人気の着せ替え人形 。2015年より大人向け新ブランド「LiccA」、2024年には、可動式関節ボディで自然なポージングができ「フォトジェニックリカ」シリーズを展開。「日本おもちゃ大賞2024」キダルト部門で大賞を受賞しています。

    「フォトジェニックリカ」シリーズは、17才の高校2年生になったリカちゃんが登場。インナーカラーなどの最新ヘアスタイルから、ファッション、細部のメイク、小物まで、全身トレンド感のある大人仕様に。さまざまなポージングが可能で、手首の先の形を変えられる右手、左手パーツも付属。アパレルブランドやキャラクターとのコラボもしています。

    Instagramでは、絶景のロケーションでのポージング姿や、ハンドメイドの衣装を着た姿など、「#リカ活」の写真が多数投稿され、話題を集めています。公式で衣装づくりのワークショップ撮影会が開催されたり、手作り服が作れる手芸本が発売されたりと、ファンの創作活動をサポートファンによる派生コミュニティが生まれ、盛況です。

     

    2.「tomica PREMIUM」:コレクション性

    「tomica PREMIUM」/出典:タカラトミー公式サイト

    出典:タカラトミー公式サイト

    「トミカ」は、1970年に、日本初の手のひらサイズの国産車ダイキャスト製ミニカーシリーズとして発売されました。2015年より、大人のためのトミカシリーズ「tomica」が作られ、「tomica PREMIUM」、大人向けプレイセット「tomica+(トミカプラス)」などを展開。「tomica PREMIUM」の累計販売台数は、1,700万台を突破しています(※2024年7月時点)。

    「tomica PREMIUM」は専用の金型を用いて、車のフォルム、細やかな塗装や印刷、ホイールのデザインなど細部までリアリティを再現。“なつかしい”往年の名車や国産車、スポーツカーをはじめとして、自衛隊90式戦車や航空自衛隊T-4 ブルーインパルスなど、車好きやマニアに刺さるラインナップがそろっています

    タカラトミー公式チャンネルでは、これまでに新商品の開封動画やレビュー動画を多数公開。商品の再現度の高さやクオリティの素晴らしさなど、ファンを納得させる熱い魅力を紹介しています。コレクター志向のファン層に効果的に訴求し、人気につながっています。

    3.「Tamagotchi Uni」:リバイバル

    出典:たまごっち公式サイト

    出典:たまごっち公式サイト

    「たまごっち」は1996年に誕生し、爆発的にヒットした“デジタルペット育成玩具”。ごはん・お風呂・そうじの世話をしたり、一緒にゲームをしたりなどと、遊びながらキャラクターを育成し、成長を楽しむ玩具です。これまでに全36種の商品が発売され、全世界で累計9100万個を売上げています(2023年3月末時点)。

    2023年に発売された新機種「Tamagotchi Uni」は、再び売上を大きく伸ばし、ヒット商品になりました。シリーズ初のWi-fi機能が搭載され、世界中のユーザーが育てたキャラクターたちと交流が可能に。また性格の種類も増え、着せ替えを楽しんだり、プロポーズ機能が生まれたりなどと、より個性的なキャラクターが育てられるように進化しています。

    かつて「たまごっち」で遊んでいた世代が、なつかしさとともに最新技術に興味を持ったこと、また親子で一緒に楽しめることからも、リバイバルヒットにつながったと考えられています。

     

    4.「BEYBLADE X」:カスタマイズ性

    「BEYBLADE X」/出典:タカラトミー公式サイト

    出典:タカラトミー公式サイト

    ベイブレードは、1999年から発売されており、ベーゴマを現代風にアレンジした、コマ同士を戦わせる玩具。2023年より第4世代「BEYBLADE X(ベイブレード エックス)」が登場し、歴代モデル最速の驚異的なスピードと衝撃で、“エクストリームなバトル”を実現。プレイする人だけでなく、観客をも魅了するギアスポーツ」として注目を集めています。

    ベイブレードは、3つのパーツを組み換え、自分のコマをカスタマイズできるのが特徴。勝負はスタジアムで行い、専用のランチャーを使ってベイブレードを発射させ、相手を外に弾き出すか、相手より長く回転し続けることで勝利となります。公式大会は、年齢制限なしで参加可能。ベイブレード25周年を記念した国際大会では、30代~40代の参加者も集まり、賑わいを見せました。

    大人がハマる理由の一つは、カスタマイズの楽しさ。ベイブレードは公式サイトやYouTubeをはじめ、ファンによるコミュニティや専門サイトが数多く存在し、プレイヤー同士で情報を共有したり、経験や知識をもとにバトルのアドバイスをしあったりと、交流が盛んです。 自分だけのベイブレードを作り、仲間と交流しながら技術や戦略を磨いていくことに喜びを感じ、深い満足感を得ているようです。

     

    5.「シルバニアファミリー」:公式アンバサダー

    出典:シルバニアファミリー公式サイト

    出典:シルバニアファミリー公式サイト

    シルバニアファミリーは、1985年より発売。“森に囲まれたシルバニア村に住む動物たち”という設定で、ウサギやネコ、イヌ、リスのほか、41家族の人形とお家やお店、家具などをシリーズで展開。動物たちのストーリー設定やデザインなど、独自のかわいい世界観で魅了し、世界70ヶ国以上から愛されています。

    2020年(シルバニアファミリー35周年)から公式アンバサダーが任命され、SNSで積極的に魅力を発信。手作りの服や雑貨、ドールハウスなどのオリジナルアイテムから、アート作品やジオラマ、コマ撮りのアニメなど本格派の創作物でも多くの注目を集め、「#シル活」としてファン層を拡大してきました。

    さらに「シルバニアファミリー総選挙」「赤ちゃん総選挙」なども開催され、ファンの人気投票から商品が生まれることも。アンバサダーやファンとともにブランドを築きながら、不動の人気を確立しています。

     

    まとめ

    キダルトの強い購買意欲やSNSの発信力は、今後も消費に大きな影響を与え、玩具市場にとどまらず、他の業界でも注目の存在になるでしょう。今回ご紹介したトレンド傾向を参考に、マーケティングに活用していきましょう。


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