ファンマーケティングとは?基礎知識から手法・戦略・成功事例まで徹底解説

更新日:2025年06月06日(金)

ビジネス競争が激化する中、企業が選ばれ続けていくためにはファンの存在が欠かせません。ファンは商品やブランドに愛着を持ち良い影響を与えてくれる存在でもあり、ファンマーケティングに取り組む企業が増えています。

今回はファンマーケティングについて、概要から注目されている背景、メリット・デメリットまで詳しく解説。また主な手法や成功ポイント、事例まで幅広く紹介しています。

ファンマーケティングの概要

ファンマーケティングの概要

まずは、ファンマーケティングの概要についてわかりやすく解説します。

 

ファンマーケティングとは

ファンマーケティングとは、企業や商品・ブランドに対して愛着のあるファンを増やし、中長期的に売上を拡大させていくマーケティング手法のこと。企業がファンとの交流や共創を通じて長期的な関係性を築き、ブランドを作っていくことが目的です。

ファンが増えるほど、企業の安定成長や新規顧客の獲得にもつながるため、長期的に売上拡大させていく上で重要な施策です。

 

ファンマーケティングとファンベースマーケティングの違い

「ファンマーケティング」と「ファンベースマーケティング」は、どちらもファンを増やしていく点では同じですが、「概念」が少し異なります。

ファンベースの提唱者かつファンベースカンパニー会長の佐藤尚之氏によると、ファンベースとはファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方のことです(出典:佐藤尚之・津田匡保、共著「ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために」)

「ファンマーケティング」はマーケティング活動の一環としてファン作りをしたり、ファンからの声を集めたりしてブランディングします。一方で、「ファンベースマーケティング」とはファンの熱い想いに寄り添うのが最優先で、ファンを理解することで事業価値やブランド価値を高めていく方針となるのが違いです。

 

ファンマーケティングが注目されている背景

SNSの普及により、誰でも気軽に情報収集・発信できるようになりました。従来の広告などからの情報よりも、購入者のリアルな口コミやレビューへの価値が高まり、商品購入の決め手になる傾向が強まっています。

またSNSのアルゴリズムによって共通の趣味趣向の人とつながりやすくなっているため、1人のファンが発信した情報は共感を得やすく、フォロワーらが購入し新規顧客につながる傾向も。このように消費が活性化し市場にも影響を与えることから、注目が高まっています。

Z世代が信用して見ているコンテンツ

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、新大学生にSNSで信用して見ているコンテンツについて調査しました。X(Twitter)のインフルエンサーや有名人からの美容情報は約4割の人が信頼している傾向。他にもSNSでの情報収集の実態を明かしています。

参考記事:SNS上での情報収集と広告に対する感じ方 ~新大学生編~

 

ファンマーケティングのメリット・デメリット

続いてはファンマーケティングのメリット・デメリットについて、それぞれ説明していきます。

メリット

・売上向上
・潜在ニーズの把握
・新規顧客の開拓

売上向上

ファンは商品・サービスを愛用し継続購入してくれるため、LTV(顧客生涯価値:一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益)が伸びやすくなります。市場が成熟し、新規顧客の獲得が難しくなっている現在では、ファンによるリピート購入や関連商品の購入が安定収益として重要になるでしょう。

例えば、ファンの声を取り入れて商品をリニューアルした結果、既存顧客や新規顧客からの購入が増え、売上を伸ばすことに成功した企業もあります。このように既存顧客がファン化していくことで、売上向上も望めるでしょう。ファンの存在により、価格競争に巻き込まれにくくなる点もメリットです。

 

潜在ニーズの把握

ファンの声を収集し、消費者の潜在ニーズを把握できるのも大きな利点です。ファンは日常的に商品を愛用しているため、企業視点では気づかない特別な価値や活用方法、改善点などを把握していることがあります。そのため新商品の開発やサービス改善に活かすことが可能です。

実際にファンへのサンプリングモニター体験などで、ユーザーの声を集めるのも有効です。その際、利用頻度の高い人に加え、熱意や愛着のある人を選出するのがポイント。ファンと共創し、消費者に寄り添った商品を作ればヒット商品が生まれ、ブランドの価値も高められるでしょう。

 

新規顧客の開拓

ファンは商品・サービスの魅力を発信するのにも長けています。SNS上での口コミやレビューは従来の広告よりも信頼度が高く、購入につながりやすいのがメリット。ファンからの発信で親近感を与えつつ自然に魅力を伝えることができます。

情報発信により共通の悩みを持つ人から共感され、「こんなのが欲しかった!」「自分も試してみたい!」と商品購入につながりやすいのです。このようにファンの声が消費者の興味を引き、商品購入へのハードルを下げてくれることから、新規顧客の開拓がしやすくなります。

 

デメリット

ファン作りに時間がかかる

ファン作りに時間がかかる

注意点は、ファンの育成に時間と労力がかかることです。ファンは商品やブランドに共感し、魅力を広めてくれる存在。熱烈なファンを集めるためには、ブランドの理念や世界観に「深く共感し、愛着を持ってもらう」ことが前提となります。すぐに成果が出るとは限らず、時には好意につながらない場合もあるでしょう。

ファンマーケティングで成果を得るためには、短期的なリターンを求めず、長期的な視点を持って取り組むことが大切です。時間と労力はかかりますが、共感が深いほどファンと長期的な関係性が望めるでしょう。

Z世代は何に価値を感じる?

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、Z世代の大学生を対象にお金事情についてアンケート調査を実施。お金を稼ぐ方法や目的、使い道などを調べ、何にお金をかけているのか詳しく分析しました。

参考記事:一人暮らし大学生のお金事情を調査! 働き方や生活・趣味にかけるお金の内訳など詳しく解説

 

ファンマーケティングの主な手法

ファンマーケティングには、ファンを「集める・交流する・増やす」ためのさまざまな施策があります。各施策の目的や持続性、効果について一覧でまとめました。

ファンマーケティングの主な手法

新規顧客の開拓には「SNSキャンペーン」や「サンプリング」がおすすめですが、効果は一時的なもので持続性が低いと考えられています。

またファンの育成関係性強化には7つの施策がありますが、購入につながりやすいのは「ライブ配信」や「メルマガ配信」、「クラウドファンディング」や「共創型商品開発」でしょう。なかでも「サブスクリプション」は継続性が高く、安定収益につながりやすいのがメリットです。

一方で「ファンコミュニティ」や「ファンミーティング」は、企業とファンあるいはファン同士の交流を深め、エンゲージメント向上も実現可能。ある程度時間はかかりますが、継続的な関係を築き、消費への好影響も期待できそうです。

10代女子が利用しているSNSは?

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、10代女子のSNS利用についてアンケート調査を実施。LINE、Instagram、YouTubeと利用率が高く、休日のスマホ使用時間は「6時間以上」と答えた人が35.3%で最多に。各SNSのアカウント数や使っている機能についても詳しく調べました。

参考記事:10代女子のスマホ利用実態を調査!

 

ファンマーケティングの成功ポイント3つ

ファンマーケティングの成功ポイント3つファンマーケティングを成功させるポイントを3つ紹介します。

 

顧客やファンのニーズ把握

ファンマーケティングでは、ファンのニーズを正確に把握することが大切です。 ユーザーの声をもとに商品やサービスを見直すことで、顧客満足度の向上につながるだけでなく、企業への信頼も高まりファンとの関係がより強固なものになるからです。

顧客やファンのニーズを把握する手段としては、インタビューアンケート、イベントでの直接的な対話に加え、SNS上の会話を観察するソーシャルリスニングなどが有効。日常的なやりとりの中からリアルな声を拾い上げることが、ファンの心をつかむ商品やサービスづくりの土台になります。

 

交流の場を作る

ファンとの交流の場を作り積極的にコミュニケーションをとることも、ファンマーケティングにおいて大切です。 例えばコミュニティサイトなどを開設し、ファン同士が気軽に交流できる場を作ると活動も盛り上がるでしょう。

ファン同士の交流によって仲間意識が芽生えるだけでなく、ブランドへの親近感も高まり愛着やロイヤリティを高められるでしょう。ファンミーティング、ワークショップ、ライブ配信など、節度を守って交流できる場を提供していきましょう。

コミュニケーションの活性化

ファンマーケティングにおいて、企業とファン、ファン同士のコミュニケーションを活性化させることは欠かせません。 積極的な交流によって、ファンは「企業から大切にされている」「自分の意見を聞いてくれる」と実感でき、より強い愛着を抱くようになるからです。

例えば、商品・サービスに関するSNS投稿に、企業側が「いいね」やコメントで反応するだけでも、心理的な距離は一気に縮まります。企業の公式アカウントでユーザーの投稿を紹介するのも親しみを感じてもらえるようになるでしょう。

こうした双方向の関係性を築くことで、ファンのエンゲージメントが高まり、情報発信も活発に。日常的に双方向のコミュニケーションを活性化させるようにしましょう。

Instagramでのファン形成につながった事例

 

ファンマーケティングの成功事例

ファンとの交流がうまくいっている企業は、どのような工夫をしているのでしょうか。3つの成功事例を紹介します。

 

カルビー「じゃがりこ探検隊」

カルビー「じゃがりこ探検隊」

出典:じゃがりこ公式Webサイト「じゃがりこチャンネル」

カルビーは「じゃがりこ」を愛するファンが集まるコミュニティサイト「じゃがりこ探検隊」を2023年より開設しています。

同コミュニティは、入会テストに合格した熱量の高いファンで構成されているのが特徴。「じゃがりこ」について語りあうだけでなく、オンラインでクイズ大会をしたり、カルビー本社で「じゃがりこ」に関するゲームやディスカッションを行うなど、オン・オフさまざまな企画を実施しています。

またじゃがりこ30周年を記念した新商品の共創として、メンバーから募ったアイデアをもとに「じゃがりこ国民投票」がされ、商品発売も予定されています。ファンの活発な交流で「仲間」としてのつながりを醸成し、ブランドを育てています。

 

ヤッホーブルーイング

ヤッホーブルーイング

出典:ヤッホーブルーイング公式サイト

ヤッホーブルーイングは、クラフトビール市場において独自のコミュニケーションを築き、熱狂的なファンを増やしています。

同社の最大規模イベント「よなよなエールの超宴」は、ファンと同社スタッフが一緒に楽しむ野外ビールイベント。2010年より宴イベントが開催されており、2018年の野外イベント「超宴」には約5000人が集結。ビールを飲みながら食事やライブ演奏を楽しんだり、ビールを学べるアクティビティやセミナーも開催され、高い満足度を得てきました。

リアルイベントに加え、Web上のコミュニケーションも盛況。オウンドメディアではブランドストーリーやビールの雑学からビールづくりの裏側が知ることができたり、個性豊かなスタッフがSNSやメルマガにて情報発信し、ファンとの交流を楽しんでいます。スタッフがファンと一緒に楽しむ”姿勢で強固な関係を築き、ブランドの価値を高めています。

 

カゴメ「&KAGOME(アンドカゴメ)」

カゴメ「&KAGOME(アンドカゴメ)」

出典:「&KAGOME」公式サイト

カゴメが展開するファンコミュニティ「&KAGOME(アンドカゴメ)」はファンとの交流を目的に開設。「ファンを知る」「ファンに伝える」「ファンと一緒に体験する」という3つの柱を掲げ、2015年よりスタートし、会員数が6万人まで成長しています(2024年2月時点)。

ファン同士の交流が盛んなのはトマト栽培を楽しむ「トマコミ」。カゴメからプレゼントされたトマト苗の成長記録を写真付きで投稿し、花が咲いた!と喜びを共有したり、トマトの成長過程での悩みにはメンバーやカゴメ社員からアドバイスがされ、自然と交流が生まれています。

そのほかにもトークルームやレシピなど多くのコンテンツがあり、ファンとの共創の場としても活用され、これまでに企業サウンドロゴやチューブ型のトマトペーストなどが実現。ファンとの日々の交流を盛り上げることで、エンゲージメントを高めています。

 

まとめ

ファンマーケティングに取り組む上で大切なことは、ファンのニーズに向き合いながら長期的に関係を育んでいくことです。今回ご紹介した手法を取り入れて、積極的にコミュニケーションをとり交流を深めましょう。


Z世代の認知拡大に! マイナビのキョーソウPROJECT

キョーソウPROJECT

マイナビのキョーソウPROJECTは、Z世代の認知拡大・新規顧客化を狙いとしたプロモーション施策です。企業からの課題に対し、Z世代のメンバーがアイデアを提案、企画書として仕上げます。

プロジェクトを通して、企業の理念や商品・サービスに込められた思いを伝えることも可能。Z世代のリアルな声を反映できる新しいプロモーション施策です。

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【マイナビ】マーケティング・広報ラボ
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