界隈消費とは? Z世代を動かすアプローチ戦略と成功事例を解説

更新日:2025年05月29日(木)

SNSの定着により、人々のコミュニケーションやコミュニティの在り方も急速に変化しています。近年では「界隈」という言葉が広まり、界隈を起点に新たな消費行動が生まれていると考えられています。

今回は「界隈」の言葉の意味や種類から界隈消費の傾向やメカニズムまで詳しく解説。またZ世代を動かすマーケティング戦略や成功事例についても紹介します。

界隈の概要

まずは「界隈」の言葉の定義や分類方法について紹介します。

 

界隈とは

界隈(かいわい)とは、共通の好きなものや趣味、価値観などを持つ人々の集まりを意味します。

もともとは地理的な範囲を示す言葉でしたが、特定の趣味やコミュニティを指す言葉として使用されるようになりました。その後、近年では「好きなものが同じ人々」や「共通の趣味や関心を持つ人々」、「行動パターンが似ている人々」など幅広い意味合いに変化し、使い方も多様化しているのが特徴です。

Z世代を中心にSNSで「界隈」が広まり、2024年の「現代用語の基礎知識 選『ユーキャン新語・流行語大賞』」1位に入るほど活用が広がっています。

 

界隈の種類

界隈の種類

界隈の種類について、ここでは大きく3つに分類して説明していきます。

ジャンル系

ジャンル系は共通の価値観や特徴、テーマを持つコミュニティを指します。メンバーのアイデアや創造性などにより、界隈独自の新しい価値観やスタイルが生まれ、自己表現をしているのが特徴です。

<消費傾向>
ジャンル系はビジュアル重視の要素が強く、SNS映えする商品・サービスに注目が集まり消費と結びついている傾向。またインフルエンサー特定のジャンルに精通している人が影響力を持ち、トレンドを生み出しています。

例えば「水色界隈」は、水色や淡い色などのファッションを楽しむ人たちのことを指し、「天使界隈」は水色界隈よりもさらに透明感やかわいらしさが加わった天使のようなファッションスタイルとされています。

 

このように、それぞれの界隈に違いがあり、特定の界隈に所属することで、自分らしさを表す傾向です。

 

推し・趣味系

推し・趣味系は、好きなものを通じてつながるコミュニティを指します。特定のアーティストやアニメ・芸術、趣味などに熱心な人々が集まり、ファン同士で交流・情報収集したり、活動を盛り上げたりします。仲間と一緒に活動し、団結力や連帯感を高めているのが特徴です。

<消費傾向>
推し・趣味系の界隈は、自分の好きなものを楽しむため消費への熱が高く、推しを応援したり好きなものを極めるために惜しまずにお金をかける傾向です。また界隈の共感力も高いため、1つの投稿をきっかけに爆発的な消費が生まれることもあります。

例えばアイドル界隈では、ファンクラブの加入やライブ・イベントへの参加、グッズ収集をはじめ、X(Twitter)で最新情報や意見を投稿したりなどと活動が多岐にわたり、ファンの間で情報共有が欠かせません。

 

それぞれの界隈の特性が強く、界隈内の暗黙のルールやマナーもあるとされています。

 

トレンド系

トレンド系の中でも、SNS上で流行語のように言葉として使われるものと、派生してミーム化されるものに分けられます。トレンド系は共感度が高く、さまざまな人と同じ状況を楽しもうとする要素が強いのが特徴です。

日常会話やハッシュタグで使われ、日々の出来事や心理状況を仲間と共感し合う
・「風呂キャンセル界隈(お風呂に入るのを面倒だと感じ入浴しないこと)」
・「伊能忠敬界隈(長距離の散歩をすること、長時間歩き回ること)」
・「自然界隈(山、川、などの自然スポットを訪れること、自然を楽しむこと)」

 

話題の投稿から派生したコンテンツを作り、SNSで共有し楽しむ
・「回転界隈(音楽に合わせて回転する動画)」
・「片目界隈(片目や顔の一部を隠した写真や動画)」
・「ぬいぐるみ振り向き界隈(いろんな場所でぬいぐるみを振り向かせる動画)」

10代女子の間でもトレンド入り!

マイナビのマーケティング・広報ラボによる、10代女子を対象とした【2024年のトレンドランキング】でも「風呂キャンセル界隈」は2位にランクイン。派生した「〇〇キャンセル界隈」も広まっているようです。そのほか注目の最新トレンドも詳しく紹介しています。

参考記事:【2024年】10代女子が選ぶトレンドランキングを発表!

 

界隈消費とは

界隈消費の概要

界隈消費とは、SNSを通じた界隈(共通の好きなものや趣味、価値観などを持つコミュニティ)で生まれる消費のこと。界隈で自分の価値観や趣味嗜好を表現し、他者からの共感を得ようとする傾向もあります。

また個人の趣味嗜好が多様化していることや、界隈自体がゆるいつながりで派生して変化していくことから、界隈消費特定の界隈内だけでなく、別の界隈にも広がりやすいのが特徴です。

 

界隈消費と従来の消費傾向との違い

界隈消費と従来の消費傾向との違い

界隈消費は、仲間との一体感や界隈への貢献が消費の動機になっていることがポイント。従来の消費が生活の利便性や個人的な満足を求めるものだったのに対し、界隈で仲間からの共感を得たり自己表現を楽しむために消費し、好きなものにはお金をかける傾向も。

また界隈での話題性やトレンドに刺激を受け商品・サービスを購入し、自らも情報発信。トレンドをさらに盛り上げ加速させていく伝播力も持っています。

 

界隈消費が広まる理由

SNSのアルゴリズムの進化により、趣味趣向の合う仲間を見つけコミュニティ形成しやすくなりました。界隈の共感力は高く情報源への信頼性もあるため、仲間内で話題になると消費が促進されトレンドが急速に作られていきます。

また界隈は強い情報発信力と伝播力を持ち1つのトレンドが別界隈に波及していく傾向も。このように界隈は消費にダイレクトに結びつき、市場に大きな影響を与えていると考えられています。

 

界隈消費の4つの傾向

界隈消費の4つの傾向ここでは「界隈消費」の主な4つの傾向について、詳しく解説します。

 

界隈ごとに特性がある

界隈ごとに浸透している価値観やSNSの活用、消費行動などが異なると考えられています。

例えば、アニメ界隈ではX(旧Twitter)やYouTubeの利用者が多いとされ、関連グッズや作品への考察、二次創作などの投稿が中心。ファン同士の熱量により消費が生み出されています。

一方でコスメ界隈ではInstagram、YouTube、TikTokの利用者が多いと考えられており、新商品のレビューやメイク動画などが人気投稿。インフルエンサーの口コミが消費に大きく影響しています。このように界隈の特性により消費が生まれています。

 

SNSで発信・共有

SNSは界隈消費を促進する重要な役割を果たしています。SNSで情報収集するだけでなく、自らも“界隈の一人”として情報発信・共有していくことで消費がより活発化するからです。SNSでの投稿が盛り上がることで、新たなブームやトレンドが次々と形成されていきます。

 

界隈との共感や一体感

先述した通り、界隈との一体感を得ることが消費の主な動機商品・サービスを購入することで仲間と一緒に共感・熱狂したり、界隈で存在感を示すことに価値を感じています。

たとえばアイドル界隈では、推しカラーのものやグッズを身につけ、推しとの一体感を生み出しています。このように、共感・つながり・貢献といった要素が重視されています。

 

界隈を通して自己表現

SNSの発信や界隈とのゆるいつながりが、自己表現の一部に。自分の好きなものをSNSで発信することで界隈とのつながりが生まれ、アイデンティティが形成されていきます。個人の趣味は多様化しているため、1人が複数の界隈にわたって存在していると考えられています。

 

Z世代の特徴と界隈消費

Z世代の特徴と界隈消費

界隈消費の中心は、Z世代だと考えられています。

SNSネイティブであるZ世代はSNSを通じて情報収集し、趣味趣向の合う人と積極的に交流。人とのつながりの中で界隈が作られていき、「共感」によって購買意欲が促進されます。Z世代のSNS活用共感性が、界隈消費の特徴と強く結びついています。

Z世代の5つの特徴は?

Z世代は「SNSネイティブ」のほか、おさえておくべき4つの特徴があると考えられています。Z世代の次世代にあたるα世代との違いや共通点なども、チェックしましょう!

参考記事:「α(アルファ)世代」の特徴とは? Z世代との違いや価値観を徹底解説

 

界隈消費からトレンドが生まれるメカニズム

界隈消費からトレンドが生まれるメカニズム

界隈消費のトレンド形成は、特定の商品・サービスが界隈内で話題化され、別の界隈にも波及するというものです。

1.特定のジャンルに精通している人が「この商品はすごい!」などと情報発信

 

2.投稿が話題になると、界隈で「この機能が便利!」「こういう活用もできる!」などと情報共有が盛んに。

 

3.情報共有のやりとりの中で多くの共感が生まれ、購入が促進されます。

 

4.実際に購入した人のUGCや口コミ、レビューなどをきっかけに、界隈内・外へ情報拡散されていき、消費トレンドが作られます。

例えば、K-POP界隈で特定のアーティストの活躍が注目されると、コスメ界隈やファッション界隈にも波及して、そのアーティストが着ていた服や使用したコスメが売れるというような現象が該当します。

Z世代の消費行動は?

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、Z世代のプライベート時の“スイッチがオンになる時・オフになる時”に注目!  彼らがやる気を出す時に起こる消費やリラックスタイムの行動など詳しく調べました。

参考資料:【 プライベート編 】スイッチのオンとオフ ~Z世代/30代社会人の気持ちの変化による消費と行動~

 

Z世代を動かす界隈消費のマーケティング戦略

界隈消費を促すマーケティング戦略として、3つのポイントを紹介します。

 

界隈の価値観やトレンドを把握(SNS分析)

まずはターゲットとする界隈の価値観やトレンドを把握することが大切です。SNSの人気投稿コメント数の多い投稿を調べ、ターゲットには何の情報がどのようなコンテンツで求められているのかを分析しましょう。ハッシュタグ文言も合わせてチェックするのが大切です。

 

「共感」設計

界隈は「共感」から成り立っているため、マーケティング施策では界隈を盛り上げる企画を考えることが重要です。

誰もが安心して交流できるコミュニティサイトを作ったり、界隈のキーパーソンと共同で商品開発をしたり、トライアルイベントを開催したりなどと、情報発信したくなる導線を作りましょう。体験価値や仲間との一体感を高める企画もおすすめです。

 

界隈の拡散力を活用

界隈は強い発信力があり、別の界隈へと波及していくのが特徴です。そのためUGC(ユーザー生成コンテンツ)を使って、より拡散性を高めていくことが大切です。リポスト&ハッシュタグキャンペーンや、ユーザー参加型のチャレンジ企画・コンテストなども有効でしょう。 

合わせてチェック!

InstagramのUGCは独自のオシャレな世界観が反映されたUGCで、商品の魅力が伝わりやすいのもメリット。UGCの効果や増やすポイントについて詳しく解説しています。

参考記事:インスタグラムのUGCとは? 効果や増やす方法、事例を徹底解説

 

Z世代×界隈消費の事例

最後は、実際に界隈消費がどのように起きているか、4つの事例を紹介します。

 

GU×推し活界隈

GU×推し活界隈

出典:GU公式Instagram

GUはトレンド感のあるファッションアイテムを中心に、豊富なサイズとカラーバリエーションで商品展開をしています。推しカラーを取り入れた「推し活コーデ」が気軽に楽しめると注目を集めています。

推しカラーとは、アイドルやキャラクターなど応援している推しを象徴する色のこと。ファンは推しカラーをコーデに取り入れることで、推しへの愛情や熱意を表し、仲間との一体感を強めています。

公式Instagramでは「推し活コーデ」と題して、推しカラー別のスタイリングを紹介ファッションで推しへの愛情と自分らしさもアピールしたいニーズに対して、豊富なカラーとサイズ、プチプラ価格で応えており、支持されています。

 

著名人や専門家、インフルエンサー×コスメ界隈

著名人や専門家、インフルエンサー×コスメ界隈

コスメ界隈では、著名人や専門家、インフルエンサー発信の情報に大きく影響を受け、消費が活発になっています。

例えば、ヘア&メイクアップアーティストの小田切ヒロ氏は、最新の美容情報やメイクテクニックなど、美容にまつわるコンテンツを配信。YouTubeチャンネル登録者数145万人、Instagramフォロワー数70万人超え(2025年5月時点)と、絶大な支持を集めています。

小田切氏がおすすめしたアイテムを購入した人々は、自らも「#ヒロ買い」とタグ付けして情報発信。実際に使ってみた感想やレビュー、Before~After画像など、さまざまな切り口でUGCが作られ、消費が加速「#〇〇買い」をキーワードに、多くのトレンドが生まれています。

 

サンリオ×推し活界隈

サンリオ×推し活界隈

出典:サンリオ

サンリオの「エンジョイアイドルシリーズ」は、推しを楽しく応援するためのグッズシリーズ。かわいい(推し)とかわいい(サンリオのキャラクター)の相乗効果で、推し活をする人に向けた商品が展開されています。

アクリルスタンドホルダーやペンライトポーチ、推しのぬいぐるみをよりかわいく変身させるコスチュームや専用ポーチ、誕生日を祝うカスタムケーキメーカーなどもあり、推し活に欠かせない定番アイテムから実用性や付加価値の高いオリジナルアイテムまで幅広く揃います

推し活をさらに楽しく盛り上げてくれるかわいいアイテムが共感を呼び、Z世代からの支持を得ています。

 

ZONe×アニメ・ゲーム界隈

ZONe×アニメ・ゲーム界隈

出典:サントリーキャンペーン事務局

エナジードリンクブランド「ZONe」は、アニメ・ゲームなどのカルチャーを積極的に取り入れており、さまざまなアーティストや企業とのコラボレーションを展開しています。

人気アニメ「東京リベンジャーズ」や「ブルーロック」などとコラボした際は、限定描き下ろしのコラボ缶で大きな話題に。アニメの世界観を再現したスタイリッシュなデザインに、ファンは熱狂。SNS上でUGC(ユーザー生成コンテンツ)が拡散され、コラボ缶をストック買い・コンプリート買いする人が続出しました。

またオリジナルグッズ当たるキャンペーンでも注目を集め、新規層の開拓にもつながっています。

 

まとめ

個人の趣味や価値観の多様化が進む中、「界隈」が消費行動に与える影響は大きく、ブームやトレンド化しやすくなっています。今後さらにZ世代や若年層のインサイト分析が重要になり、彼らのニーズを把握していくことが大切でしょう。


ティーンズキョーソウPROJECT

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マイナビでは、学生コミュニティ「ガクラボ」を運営しており、さまざまな高校や専門学校、大学の学生が集まっています。ティーンズキョーソウPROJECTでは、アイデアミーティングやワークショップを通じて、トレンドに敏感な高校生のアイデアを得ることもできます。

若年層のインサイト分析からさまざまなプロモーション施策まで、幅広く運用をサポートしていますので、お気軽にご相談ください。

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