ステルスマーケティングとは? 基本知識からリスク・対策まで徹底解説

更新日:2025年06月25日(水)

SNSの普及が進み、消費者による口コミがより重要視されるようになりました。口コミによる情報は信頼されやすく、商品購入につながりやすい傾向も。このような理由から、口コミ投稿を促す動きが活発化し、さまざまな問題も出てきました。

今回は「ステルスマーケティング」について、内容や問題点、リスクまでわかりやすく解説。また知っておきたい事例や対策方法も紹介しますので、正しい知識を深めていきましょう。

 

ステルスマーケティングとは

まずは「ステルスマーケティング」とは何かについて、詳しく説明します。

 

ステルスマーケティングの定義

ステルスマーケティング(以下、ステマ)とは、 企業が自社の商品やサービスを宣伝する際に、広告であることを隠して商品やサービスの宣伝を行うマーケティング手法 のこと。広告であるのにも関わらず、あたかも一般の消費者の意見や体験のように見せかけて情報を発信することを指します。

ステマはバンドワゴン効果(多くの人が支持しているものに同調したくなる心理効果)やウインザー効果(第三者による情報発信は信憑性が高いと感じられる心理効果)を悪用した手法で、消費者を誤認させてしまう恐れがあるとして禁止されています。

 

ステルスマーケティングに該当する代表的な手法

ステルスマーケティングは第三者を装う「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」の2つの手法があるとされています。

 

なりすまし型

なりすまし型

なりすまし型とは、 企業の人が一般消費者を装い、自社商品やサービスに関する肯定的な意見を口コミサイトなどで投稿する手法 を指します。消費者に広告だと気づかれないように商品の宣伝を行い、認知拡大や購買促進を狙うと考えられています。

また他社商品が劣っているなど、否定的な意見を投稿する行為もなりすまし型に該当します。 

 

利益提供秘匿型

利益提供秘匿型

利益提供秘匿型とは、 企業が金銭や報酬などの利益を与えている人に、商品やサービスの口コミを投稿してもらい宣伝する手法 です。芸能人やブロガー、インフルエンサーなど影響力のある人が依頼され、何らかの報酬を受け取っていることを隠したまま情報発信をするのが特徴です。

企業が金銭や商品提供など何らかの報酬を払ったり、関係性のある人に商品やサービスの宣伝をしてもらう場合は、注意しましょう。

 

ステルスマーケティングのリスクと法規制

ここでは、ステルスマーケティングの問題点と法規制について正しく理解しておきましょう。

 

ステルスマーケティングの問題点

従来、消費者は広告に対して“ ある程度の誇張・誇大表現が含まれている情報 ”として認識しており、そのことを踏まえた上で商品・サービスを購入していると考えられています。

広告表記(誇張・誇大表現の含まれている情報)されているか

ステマは「口コミ」や「レビュー」などと題して、本来なら広告や宣伝にあたる“誇張・誇大表現の含まれる情報”を発信し、広告と明示していないのが問題だとされています。広告表記が無いと、掲載情報を消費者の“リアルな意見”として受け取ってしまい、商品・サービスを購入する上で正しい判断ができなくなる恐れがあるからです。

企業による介入があるか

また著名人やインフルエンサーなど第三者に依頼して情報発信をする場合も、企業側から報酬や投稿内容の指定など“何らかの介入がないか”が問題になります。企業の介入があると消費者の中立的な意見ではなく、コントロールされた情報となるからです。

このように、実際の商品やサービスよりも良いものだと消費者が誤認してしまう恐れがあるとして、2023年(令和5年)10月1日よりステルスマーケティングは景品表示法にて禁止されています。

Z世代の商品購入のきっかけは?

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、一人暮らしの大学生の金銭事情を調査。欲しいものを購入する際の情報収集方法として、SNSが約6割超えとなりました。特に女性は約7割ほどにも迫り、SNS上の情報に大きな影響を受けていることがわかります。

参考記事:一人暮らし大学生のお金事情を調査! 働き方や生活・趣味にかけるお金の内訳など詳しく解説

 

ステルスマーケティングの法規制「景品表示法」

消費者庁は消費者が合理的に商品、サービスを選べる環境を守るため、2023年10月よりステルスマーケティングを「景品表示法」の不当表示にあたると定めました。

「景品表示法」の不当表示

「景品表示法」の不当表示

景品表示法で禁止されている不当表示は大きく分けて3つあり、優良誤認表示(第1号)、有利誤認表示(第2号)、ステマそのほか誤認される恐れがある表示(第3号、内閣総理大臣の指定に基づく表示)に該当します。

優良誤認や有利誤認表示の代表的な例は表でまとめましたが、第3号の不当表示はステマのほか、さまざまなケースも当てはまるため下記で把握しておきましょう。

「景品表示法」において、そのほか誤認される恐れがある表示

無果汁の清涼飲料水等についての表示

(無果汁・無果肉にも関わらず、果実名を用いた商品名、説明文等を表示する等)

 

・商品の原産国に関する不当な表示

(一般消費者が原産国を判別することが困難な場合、原産国以外の国名表示をする等)

 

・消費者信用の融資費用に関する不当な表示

(消費者信用の融資費用について実質年率が明瞭に記載されていない場合、融資費用の額の表示等)

 

・不動産のおとり広告に関する表示

(不動産取引において取引できない物件を広告に掲載する等)

 

・おとり広告に関する表示

(一般消費者を誘引するために、取引する意思のない商品・サービスを表示する等)

 

・有料老人ホームに関する不当な表示

(有料老人ホームの施設、設備、サービスなどが実態と異なる等)

 

出典:「事例でわかる景品表示法」(消費者庁、2024年12月改訂版)

 

ステルスマーケティングの規制に違反した場合

処罰の対象

景品表示法の不当表示にあたる内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)が処罰の対象とされています。広告主から広告・宣伝の依頼を受けてSNSへの投稿を行うインフルエンサーなどは規制の対象外となりますが、例外的に、広告主と共同して商品等を供給しているなどという場合には、インフルエンサー等も規制の対象となることがあります

処罰の内容

ステルスマーケティングに該当する行為は認められた場合、消費者庁から事業者に対し「措置命令」(不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施など)が行われます。

ただし違反行為の内容に優良誤認・有利誤認表示が含まれる場合は、課徴金納付命令の対象となることがあります行政指導や行政命令に従い改善するといった過程はなく、即座に罰金が課せられることがあるため注意しましょう。

また措置命令に違反すると懲役刑または罰金となり、再犯では課徴金額も引き上げられます。さらに、消費者から損害賠償請求を目的した訴訟が起こされることも企業の社会的信用が失われる恐れがあるため、しっかりとした対策をとることが重要です。

 

ステルスマーケティングを防ぐ対策4つ

ステルスマーケティングは無自覚のまま規制を犯してしまうこともあります。知識を深め、正しい対策をしていきましょう。

 

広告表記をする

企業が商品・サービスの宣伝活動を目的として、何らかの関係性がある第3者に情報発信をしてもらう際には、それらの情報が「広告」であることを必ず明示するようにしましょう。

投稿に「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」などと表記

 

※誰が見ても常に広告であることがわかるように、 明確かつ目立つように記載 することが重要

 

事業者との関係性を明記

企業が著名人やインフルエンサー、消費者などに宣伝活動を依頼した場合は、上記の「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の表示とともに、事業者との関係性を明記しておくのも有効です。

提供:〇〇(※企業名)」

「〇〇(※企業名)から商品を無償提供してもらい、感想を投稿しています」

 

広告主を明記した文章での記載も認められており、商品提供や報酬の有無まで明示しておくと、消費者も認識しやすいでしょう。

 

ガイドライン作成

ステルスマーケティングを正しく理解し、社内でガイドラインを作成し共有することも大切です。

マーケティング担当者や広報担当者などが景品表示法について学んだり、セミナーを受講してもらい、ステルスマーケティングについて理解を深めましょう。 その後、法令遵守のための社内規定や行動規範をガイドラインにまとめておきます。 トラブル発覚時の対応方法なども、まとめておくと安心です。

 

正しい情報発信

消費者が誤認してしまうような紛らわしい広告表示も景品表示法の違反行為となります。

優良誤認表示や有利誤認表示のほか、消費者が誤認する恐れがある表示はすべて禁止されています。広告表記の文字が小さかったり、背景と同化していて認識できないのもNGです。また虚偽や誇張の表現を避け、事実に基づいた内容を発信してもらうようにしましょう。

 

Web広告の種類とステルスマーケティングの比較

Web広告の種類とステルスマーケティングの比較

Web上にはさまざまな形式の広告があり、なかには広告か通常のコンテンツか判断しづらいものもあります。ステマの問題点は、広告に該当するものに「広告」だと明記されていない点です。表記や識別性の面から比較していきましょう。

注意が必要なのはネイティブ広告です。記事やSNSの通常投稿などと同じエリアに表示される「インフィード広告」や新着・おすすめなどのエリアに表示され「レコメンドウィジェット広告」は識別性が低く、広告であることがわかりづらいこともあります。

またアフェリエイト広告も、バナーやボタン広告、アフェリエイトリンクを使用する際は「広告」「PR」「アフィリエイトリンク」などと必ず表記しましょう。 「この記事はアフィリエイト広告を利用しています」「このページにはプロモーションが含まれています」「〇〇(会社名)から商品の提供を受けて投稿しています」 などと記載するのも有効です。

広告表記は必ず誰が見てもわかる形で、わかりやすく明示するようにしましょう。

Z世代は広告をどう見ている?

マイナビのマーケティング・広報ラボでは、Z世代の新社会人に対して広告に対する感じ方を調査! 【PR表記】されているコンテンツに対して、コンテンツの内容がよければ気にしないという人が半数以上だと分かりました。そのほかSNSで信用して見ているコンテンツについても詳しくまとめています。

参考記事:SNS上での情報収集と広告に対する感じ方 ~新社会人編~

 

ステルスマーケティングに該当する? 理解しておきたい事例

企業が商品やサービスの宣伝をする際は、ステルスマーケティングに該当しないように配慮しなければなりません。ここでは注意すべきポイントを押さえておきましょう。

事例参考:ステルスマーケティングに関するQ&A(消費者庁)

 

著名人・インフルエンサーら第三者の投稿

著名人やインフルエンサーら第三者に投稿を依頼する場合は、企業との「関係性」がポイントとなり、ステルスマーケティングに該当する・しない場合があります。

広告表示が必要な場合

例えば著名人やインフルエンサーに金銭を支払い、SNS上で商品・サービスを宣伝してもらう場合は、広告であることを明示しなければなりません。また商品を無償で提供し、彼らに使用後の感想を投稿するように呼びかける場合も、特定の著名人やインフルエンサーを選定していることから一定の関係性が認められ、広告表示が必要となる場合があります

広告表示が不要な場合

企業から報酬や投稿内容指示など一切の関係性を持たず、愛用品などを自由に情報発信する場合はステルスマーケティングには該当しません。

10代女子に人気のインフルエンサー

インフルエンサーは情報発信能力が高く、消費への影響力も拡大しています。マイナビのマーケティング・広報ラボでは、10代女子に人気のインフルエンサーについてランキングを発表!人気の理由や、初ランクインとなったきっかけなど、10代のリアルな声も入れながら詳しくまとめています。

参考記事:【2025年4月版】10代女子が選ぶインフルエンサーランキング

 

口コミ投稿

近年、商品やサービスを購入した消費者に対し、口コミやレビュー投稿を行うことを条件として割引やクーポン券を提供し、口コミの数を増やそうとしているケースもよく見受けられます。口コミを依頼し、記載してくれた人にプレゼントや特典を提供するのは問題ではありません

一方で、高評価のレビューや良い口コミなど投稿内容について指示・強制している場合は、ステルスマーケティングに該当します。企業が「口コミ投稿をお願いします!」と報酬付きで依頼するのはOKですが、投稿内容について指示をするのは問題となります。

 

過去の投稿

先述した通りステマの規制は2023年10月から施行されていますが、それ以前の過去の投稿も問題があれば処罰の対象となります。過去の投稿にも問題がないか再度確認するようにしましょう。

例えば、企業と関係性のないインフルエンサーが、商品を愛用していることをSNSで投稿している場合は問題ありません。ただしこの過去投稿を見た企業から商品Aをプレゼントされ「今後もよろしければSNSに投稿してください」などと宣伝活動を依頼された場合は、過去の投稿には「PR」等の表記は必要ないですが、プレゼントを受け取った後の投稿からは広告である旨を表示しなければなりません。

このように過去の投稿や関係性を含めて景品表示法の違反とならないかどうかを確認する必要があります。

 

サンプリングへのレビュー投稿

街頭で不特定多数の人に試供品を無償で配布して「試供品の使用後の感想をSNSに投稿してください!」と声掛けするのであれば、ステルスマーケティングには該当しません。なぜなら不特定多数の人に配布していますし、配布者が試供品に対して良い感想・悪い感想を自由に投稿できるからです。

企業がサンプリングする際は、消費者に対して、商品提供の目的を明確に伝えましょう

 

まとめ

ステルスマーケティングは、実際の商品やサービスよりも良いものだと消費者が誤認してしまう恐れがあるとして、景品表示法違反となりました。今回紹介したようにルールを正しく理解した上で情報発信を行うことが大切です。


UGCの活用

ユーザーからの自発的な投稿を増やすためには、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用が欠かせません。UGCを促す手順やメリット、増やすための施策、事例について詳しく解説しました。

この記事を書いた人
マイナビベアの写真
【マイナビ】マーケティング・広報ラボ
みなさんのライフステージに合わせた5つのメディア運営を行っています。 ナビゲーターのマイナビベアが、消費者調査からサービス紹介まで最新情報を配信。 また、今すぐ使えるインサイトデータからお得なセールス情報まで マーケター・広報のための最新情報をお知らせしていきます。

おすすめのお役立ち記事

他の記事も見る
ステルスマーケティングとは? 基本知識からリスク・対策まで徹底解説

2025年06月25日(水)

ステルスマーケティングとは? 基本知識からリスク・対策まで徹底解説

【男性編】20~30代社会人の仕事時の下着事情とは? インナー・パンツ・靴下の購入実態を徹底調査!

2025年06月24日(火)

【男性編】20~30代社会人の仕事時の下着事情とは? インナー・パンツ・靴下の購入実態を徹底調査!

【2025年上半期】10代女子が選ぶトレンドランキングを発表!

2025年06月11日(水)

【2025年上半期】10代女子が選ぶトレンドランキングを発表!

おすすめのお役立ち資料

他の資料も見る
【 プライベート編 】スイッチのオンとオフ ~Z世代/30代社会人の気持ちの変化による消費と行動~

【 プライベート編 】スイッチのオンとオフ ~Z世代/30代社会人の気持ちの変化による消費と行動~

【 仕事編 】スイッチのオンとオフ ~Z世代/30代社会人の気持ちの変化による消費と行動~

【 仕事編 】スイッチのオンとオフ ~Z世代/30代社会人の気持ちの変化による消費と行動~

Z世代女性のダイエット・ 健康意識と自分の見た目に対する意識

Z世代女性のダイエット・ 健康意識と自分の見た目に対する意識

おすすめのお役立ち動画

他の動画も見る
【Z世代コミュニティを活用した事例から見る】「共創」マーケティングでZ世代をファン化させる鍵とは?

【Z世代コミュニティを活用した事例から見る】「共創」マーケティングでZ世代をファン化させる鍵とは?

広告掲載やメディアに関するお問い合わせはこちらから

お問い合わせ
050-5443-2281

受付時間:平日10:00〜18:00(弊社所定の休業日を除く)